日本獣医師会雑誌
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62 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
日本産業動物獣医学会会誌
  • 村中 雅則, 片山 芳也, 丹羽 秀和
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 10 号 p. 785-787
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    症例はサラブレッド種競走用馬,雄,3歳.左陰囊の腫脹と慢性の疝痛様症状を呈したため,両側の精巣および精巣上体が摘出された.左精巣上体尾部には乳白色の膿様物が貯留していたが,病原性を有する細菌は分離されなかった.病理組織学的に,左精巣上体に変性ないし壊死した精巣上体管由来の不整な限局病巣が多数存在し,病巣周囲には漏出した精子を貪食したマクロファージや類上皮細胞が多数観察されたことから精子肉芽腫と診断された.また両側精巣では精祖細胞や精娘細胞は変性し,精細管内へ脱落し,精子形成不全の状態であった.以上の結果より,本症例は何らかの感染による精巣上体炎に端を発して形成された精子肉芽腫により抗精子抗体が産生され,二次的に精子形成障害を惹起した可能性が示唆された.
日本小動物獣医学会会誌
  • 松鵜 彩, 島田 洋二郎, 奥田 英令, 保志 昌子, 中村 遊香, 日笠 喜朗
    原稿種別: 原著
    2009 年 62 巻 10 号 p. 789-795
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    犬の急性下痢症に対して,ベルベリン配合動物用整腸消化剤(BB剤)および生菌配合動物用止瀉剤(DB剤)を単剤投与あるいは併用投与し,対照である人用止瀉剤(Ph剤)およびプラセボ剤(P剤)とその治療効果を比較した.試験に供した犬126頭を,BB群,DB群,BB+DB群,Ph群およびP群の5群に分け,各製剤を投与した.その結果,BB剤およびDB剤の単独投与は,下痢に対する治療効果を有することが明らかになった.また,BB剤およびDB剤を併用により治癒までの日数が短縮し,その治療効果も増強することが明らかになった.
  • 片野 修一, 宮 賢次郎, 山我 義則, 藤原 範子, 森田 剛仁, 島田 章則
    原稿種別: 原著
    2009 年 62 巻 10 号 p. 796-801
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    犬の乾性角結膜炎(KCS)の治療に,シクロスポリンの角膜組織への透過性と溶解度の点から0.025%および0.05%シクロスポリン点眼液(α-シクロデキストリン含有)を異なる材料と方法で作製し,おのおのKCS罹患犬5症例に臨床応用を試み,その効果を比較検討した.評価項目として,結膜,角膜,角膜輪部,眼脂に区分した眼症状の改善度およびシルマー涙液試験(STT)を用いて測定した涙液量を指標として臨床評価を行った.その結果,全例に眼症状の改善が認められ,0.025 %点眼液より0.05%点眼液のほうが,角膜所見および眼症状の総合所見において有意な(P <0.05)改善を示した.STT値は,0.025%点眼液で平均4.5±1.2mm/分,0.05%点眼液では平均8.1±2.0mm/分といずれも増量を示した.また0.05%シクロスポリン点眼液は製剤として沈澱,混濁がなく,均一安定性を示した.以上の成績から,犬のKCS治療に0.05%シクロスポリン点眼液が臨床的に有用であることが示唆された.
  • 原田 佳代子, 上地 正実, 亘 敏広, 山本 洋史, 海老澤 崇史, 西田 幹, 藤原 めぐみ, 太田 譲
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 10 号 p. 802-806
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    去勢雄,4歳齢のメイン・クーンが,食欲不振および嘔吐を主訴に来院した.血液検査では,尿素窒素(164mg/dl)およびクレアチニン(20.5mg/dl)の上昇が認められた.腹部X線検査,超音波検査,排泄性尿路造影検査の各所見から,腫瘤による尿管閉塞およびそれに伴う急性腎後性腎不全と判断し,開腹術を実施した.腫瘤の摘出が不可能であったため尿管との癒着を剝離し,術後から腹膜透析を行った.腫瘤の病理組織検査においてリンパ腫と診断されたため,ステロイド療法を併用したところ活動性,食欲ともに回復し良好に経過したが,第67病日に死亡した.剖検で腎臓を含む全身臓器の組織にリンパ腫の浸潤が認められた.腹膜透析療法を併用することによりQOLを改善することができたことから,本症例においてはこの方法が有効であったと考えられた.今後,腹膜透析の導入基準や予後ならびに治療継続の基準について検討する必要性が示唆された.
  • 佐藤 隆, 鷲巣 誠, 鳥巣 至道, 池上 裕, 溝口 五常, 須崎 孝次
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 10 号 p. 807-809
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    犬の動脈管開存症の閉鎖手術における動脈管の剝離操作をより安全かつ簡便に実施するために新たに考案したフックは,動脈管剝離の際に周囲の組織に損傷を与えにくいので動脈管を安全に確保できる.フックの形状は肉厚かつ滑らかな円形とした先端を持ち,その中心に糸を通す穴を開けたものである.著者らは本フックを用いて5例の犬の動脈管開存症の動脈管剝離を安全に実施することができた.
  • 金谷 俊平, 御領 政信, 佐々木 淳, 宍戸 智, 岡田 幸助
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 10 号 p. 810-814
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    16歳齢の日本猫,雑種の去勢雄が,歩行困難,起立困難,ふらつき歩行等があるとの主訴で来院し,初診日の9日後には顔面から前肢に至る痙攣発作が認められた.その時の血糖値は著しく低値で(32mg/dl),臨床的にインスリノーマが疑われた.試験的開腹術により,膵臓右葉における直径6mmの単発性腫瘤を摘出,病理組織学的に島細胞腫と診断された.コンゴー赤染色では,間質にアミロイドの沈着が証明され,腫瘍細胞は免疫組織化学的にクロモグラニンAに対して陽性,インスリンに対して陰性を示した.電顕検索では,腫瘍細胞は径100~250nmの分泌顆粒を有していた.短桿状のコアを有し限界膜との間にハローが存在する典型的β顆粒はまれで,電子密度の高い球形の異型顆粒が多く認められた.
日本獣医公衆衛生学会会誌
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