16歳齢の日本猫,雑種の去勢雄が,歩行困難,起立困難,ふらつき歩行等があるとの主訴で来院し,初診日の9日後には顔面から前肢に至る痙攣発作が認められた.その時の血糖値は著しく低値で(32mg/dl),臨床的にインスリノーマが疑われた.試験的開腹術により,膵臓右葉における直径6mmの単発性腫瘤を摘出,病理組織学的に島細胞腫と診断された.コンゴー赤染色では,間質にアミロイドの沈着が証明され,腫瘍細胞は免疫組織化学的にクロモグラニンAに対して陽性,インスリンに対して陰性を示した.電顕検索では,腫瘍細胞は径100~250nmの分泌顆粒を有していた.短桿状のコアを有し限界膜との間にハローが存在する典型的β顆粒はまれで,電子密度の高い球形の異型顆粒が多く認められた.