2014 年 67 巻 6 号 p. 409-412
多血症を確認し,6カ月間経過観察を実施していた15カ月齢の黒毛和種去勢牛が斃死した.本症例は発育不良が著しく,斃死に至るまでの経時的な血液検査では,赤血球数が常に高い値で推移していた.剖検では右心室壁の肥厚,心室中隔における欠損孔が確認された.病理組織学的検査の結果,肺高血圧症の所見に加えて,腎臓ではメサンギウム融解を特徴とする分節性の糸球体病変が認められた.他に大脳における散発性の出血,壊死及び回腸粘膜下組織における動脈壁のフィブリノイド変性が確認された.本症例では先天性心疾患,二次性の肺病変及び多血症がみられ,これらが腎糸球体病変の病因と考えられた.牛の先天性心疾患における腎糸球体病変に関する報告は無く,本症例は初の報告例である.