2014 年 67 巻 6 号 p. 413-418
2010年6月,2011年3月実施の発育不良豚の病性鑑定で豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)と診断した症例に,多核巨細胞を伴う非化膿性髄膜脳炎を3例認めた.全例で神経症状はなく,脳,肺,扁桃及び血清から豚サーコウイルス2型(PCV2)の特異遺伝子を検出した.病理組織学的には大脳及び脳幹部にマクロファージ浸潤と多核巨細胞形成を伴う非化膿性髄膜脳炎を認めた.脳における多核巨細胞の細胞質には透過型電子顕微鏡下でライソゾームを認め,マクロファージ由来と考えられた.In situ hybridization及び免疫組織化学的染色では中枢神経にPCV2遺伝子及び抗原を認めなかった.多核巨細胞を伴う肉芽腫性炎は脳以外にリンパ組織でも認められ,今回の脳炎はPCVADの肉芽腫性病変に関連し形成された全身的病変の一つと推察された.