2017 年 70 巻 7 号 p. 443-447
尿道移行上皮癌に罹患した12歳7カ月齢のミニチュア・ダックスフンド,避妊雌に対して尿道全摘出及び膀胱─膣吻合による尿路再建術を実施した.尿路欠損部が広範であったため,膀胱尖部に小孔を作製し,膀胱尖を腹側方向で反転させて膀胱体を尾側に移動し,膣と縫合した.術直後より随意ではないものの,外陰部からの排尿が可能であった.第126病日のX線CT検査で内側腸骨リンパ節転移が疑われたが,症例のQOLは維持されていた.尿道全摘出及び膀胱─膣吻合による尿路再建術の報告は少なく,また本症例のように膀胱を反転させて行った報告は存在しない.今回の術式は,膀胱の機能は温存できてはいないが,雌犬の尿道移行上皮癌に対する治療の選択肢の1つになるかもしれない.