2017 年 70 巻 7 号 p. 438-441
豚流行性下痢(PED)に対する市販ワクチンの有効性を調査するため,県内PED発生農場の疫学情報を分析した.ワクチン未接種群と比較して,分娩前にワクチンを2回接種した適正接種群の繁殖豚及びその子豚の罹患率及び相対リスクが低下したことから,適正なワクチン接種の有効性が示唆された.分娩前1回接種のような用法外接種群の繁殖豚の罹患率及び相対リスクは未接種群と差異はなく,子豚では減少したもののワクチンの効果は不十分と考えられた.また,すべての群で子豚の致死率及び相対リスクに差異は認められず,ワクチンにより子豚のPEDの発症防止は可能でも,発症子豚の死亡は阻止できないことが示唆された.したがって,子豚の損耗防止にはワクチンによる発症予防に加え,農場内バイオセキュリティー向上により感染豚を減らす対策が重要であると考えられた.