日本獣医師会雑誌
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産業動物臨床・家畜衛生関連部門
乳牛の第三胃食滞または第四胃食滞を疑う消化管通過障害に対するポリアクリル酸ナトリウムを用いた治療法の検討
岡本 隆行福田 靖稲村 貴史北山 奈絵田端 一博櫻井 克己
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2018 年 71 巻 10 号 p. 563-567

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抄録

第三胃食滞または第四胃食滞と考えられる排糞量の著しい減少を呈する消化管通過障害牛に対し,電解質補正や蠕動運動亢進剤注射といった従来の治療法に加えて,ポリアクリル酸ナトリウム(PANa)10gを水道水に溶解してポリボトルないし経鼻カテーテルで経口投与する方法を試みた.従来法のみの治癒率は16.4%(10/61)であったが,本法を併用することで84.2%(16/19)となり,治癒率は有意に上昇した.PANa併用群のうち治癒した症例は,全例PANa水溶液をポリボトルで経口投与していた.処置前の血液検査結果では,高Ht値,高BUN値及び低K値並びに低Cl値が認められたが,PANa水溶液を投与後,排糞が開始された時には正常値に回復していた.以上のことから,PANa水溶液をポリボトルで経口投与する方法は,第三胃食滞または第四胃食滞が疑われる消化管通過障害の新しい治療法となる可能性が示唆された.

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