2018 年 71 巻 10 号 p. 568-572
牛の核内コクシジウム症について,2012〜2016年に大分県にて病性鑑定に供された146農場の牛199頭の消化管材料について回顧調査を実施した.199頭中9頭(4.5%)の牛で核内コクシジウム感染が確認され,これらはすべて異なる農家の黒毛和種子牛で,慢性下痢及び発育不良を呈していた.肉眼的に小腸粘膜の肥厚(55.6%,5/9頭)と腸間膜リンパ節の腫大(77.8%,7/9頭)が認められた.組織学的に全例で小腸の腸絨毛の萎縮及び粘膜固有層における炎症細胞浸潤が認められた.また,粘膜上皮細胞の核内にさまざまなステージのコクシジウムが多数認められた.9頭中5頭(55.6%)の空腸のパラフィン切片からEimeria subspherica 特異遺伝子が検出された.以上のことから,E. subspherica が牛の核内コクシジウム症の原因として大きな割合を占めることが示唆された.