2018 年 71 巻 4 号 p. 193-197
疾病リスクの高いStreptococcus suis 株の侵淫状況を調査するため,名古屋市内と畜場に搬入された豚の細菌性心内膜炎病巣部及び扁桃から分離したS. suis 各119株(33農家)及び78株(27農家)について,PCR法により血清型別(莢膜合成遺伝子cps),推定multilocus sequence typing(pST型)及び病原性関連遺伝子のプロファイリングを行った.細菌性心内膜炎からは,疾病リスクが高いと推定されるcps2J+のpST1c及びpST27c株が102株(30農家)85.7%と高率に検出された.cps2J+株のpST型は,農家ごとにST1cあるいはST27cに偏る傾向がみられたが,各pST型株が検出された農家数には差は認められず,両pST型が同程度に侵淫していることが示された.cps2J+株の遺伝子プロファイルは,人患者からも分離されるpST1c/epf+/sly+/mrp+及びpST27c/epf-/sly-/mrp+型が多数を占め,豚を取り扱う関係者への啓発が重要であると思われた.