2019 年 72 巻 9 号 p. 539-544
後代検定事業で約4年間の待機期間を経て5歳齢で精液採取を再開したホルスタイン種種雄牛に,造精能の著しい低下が認められた.交尾欲,勃起能,射精能は正常であったが,精子濃度,総精子数,精子運動性及び精子生存率が低下して精子奇形率が上昇した.血中テストステロン濃度は正常レベルであり,ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン負荷試験によるテストステロン分泌は,正常反応を示した.精巣は著しく小さく,曲精細管精子形成層の菲薄化,曲精細管壁の肥厚及び弾性線維の波状多層化が認められた.精巣間質では,膠原線維の増生,小血管増殖,リンパ球や形質細胞集簇が散見された.右精巣上体精巣輸出管では,線維性肉芽による狭窄,閉塞が限局的に認められた.本症例牛は精巣間質を主体とする緩徐な血行性の滲出性炎を罹患し,精巣萎縮及び精子減少症を発症したと推察された.