2020 年 73 巻 10 号 p. 577-581
京都府内の酪農場において,牛が食欲不振,発熱,発咳等の呼吸器症状,下痢等の消化器症状を呈したとの通報を受け,PCR及びウイルス分離検査による病性鑑定を実施した.その結果,複数の牛の糞便から牛アデノウイルス特異的遺伝子が検出され,牛アデノウイルス2型(BAdV-2)が分離された.また,急性期と回復期のペア血清を用いたウイルス中和試験によってBAdV-2抗体価の有意な上昇が確認され,本ウイルスの牛群内での流行と発症への関与が推察された.さらに,周辺地域のウイルス浸潤状況を把握するため,過去3年間に周辺農場で採取された乳用牛599頭分の血清を使ってウイルス中和試験を実施したところ,516頭からBAdV-2中和抗体が検出された.発生農場及び周辺農場でBAdV-2が常在化し,牛群内に広く浸潤している実態が明らかとなった.