山形県におけるマダニ媒介感染症(TBD)発生の考察の一助とするため,2016~2018年に山形県内で採取された植生マダニ成虫158匹及び野生動物由来マダニ成虫112匹を対象にTBD病原体遺伝子の検出を試みた.結果,全マダニ検体で国内既知のTBDである日本紅斑熱,ライム病,回帰熱,ダニ媒介脳炎,及び重症熱性血小板減少症候群の病原体遺伝子は不検出だった.一方,ヒトツトゲマダニ30匹及びヤマトチマダニ1匹からはRickettsia helvetica,タネガタマダニ1匹からはRickettsia monacensis 特異的塩基配列が検出された.本研究により,山形県では国内既知のTBDは人に対する大いなる脅威とは言えないものの,国内未報告のTBDを含め,今後もTBD症例発生に対する注意が必要であると考えられた.