日本獣医師会雑誌
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小動物臨床関連部門
右心耳腫瘍を疑診し異なる経過をとった収縮性心膜炎と血管肉腫の犬各1例
佐藤 恵一佐藤 祐佳鈴木 裕弥渡辺 樹安平 佑正三原 吉平金本 勇
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キーワード: 収縮性心膜炎, , 血管肉腫
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2021 年 74 巻 12 号 p. 805-809

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抄録

元気食欲が消失した犬2頭が緊急来院し,心臓超音波検査所見から右心耳原発血管肉腫に起因する心タンポナーデを疑った.両症例とも心囊水を抜去し心膜及び右心耳切除を実施した.1例は疑診と異なり混合細胞性心膜炎及び心外膜炎と病理診断され,経過を踏まえ特発性収縮性心膜炎と最終診断した.1例は術前診断と同じ血管肉腫と診断された.収縮性心膜炎の犬は急速に回復し術後1126日現在も経過良好だが,血管肉腫の犬は術後にドキソルビシンを中心とした化学療法を行うも,皮膚,胸壁,右心室に転移病巣を形成し術後177日に死亡した.心タンポナーデは治療や予後が異なるさまざまな疾患に起因するため,慎重な診断が求められる.また,画像検査の限界や病理組織学的検査の重要性を理解し,外科的診断や治療を適応すべき症例を適切に選別し,時に積極的に行う必要がある.

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