近年,日本の黒毛和牛農場は大規模化,高密度化が進み,生後早期から濃厚飼料多給による霜降り牛肉の生産が行われている.その結果,呼吸器疾患,関節炎,中耳炎などの慢性炎症性疾患が増加し,特殊な飼養による免疫力低下が推測される.本研究では,個体の免疫に重要な役割を持つ3大栄養素の一つである脂質に注目し,生後9~30カ月の黒毛和種肥育雌牛120頭を供試牛として,血中脂肪酸の推移を調査した.ω6系脂肪酸のリノール酸(LA)は肥育中前期で有意に増加し,仕上げ期まで高値を維持したが,アラキドン酸(AA)はほとんど変化がなく推移した.ω3系脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)は肥育中前期以降有意な減少を示し,ω6/ω3比の上昇が明らかになった.