2022 年 75 巻 1 号 p. e9-e13
出生直後より精巣の腫大を認めたホルスタイン種雄子牛から外科的に摘出された精巣を病理学的に検索した.精巣は組織学的に線維性結合組織の増生を伴った大小不同の筋型動脈,小動脈,細動脈の増殖病変により置換されており,精巣固有の構造はわずかに曲精細管が認められるのみであった.血管周囲の線維性結合組織と筋型動脈の血管内皮下にはエオジンの染色性の乏しい星状から紡錘形の細胞による膠様結合組織が増生していた.トルイジンブルー染色の結果,これらの細胞周囲に異染性が確認された.本症例は組織学的に,筋型動脈,小動脈,細動脈の複数の種類の血管組織と粘液産生能を有する間葉系細胞の増殖病変と特徴づけられ,精巣の血管過誤腫と診断された.家畜精巣における血管過誤腫の報告は過去に子牛で1例認めるのみで,本症例はわが国では初めての報告である.