2022 年 75 巻 1 号 p. e18-e23
黒毛和種子牛1頭が4日齢で発熱,呼吸器症状,神経症状を呈し,17日齢で死亡した.剖検では腹膜や肝実質の多発性白色結節,前胃及び第四胃粘膜のび爛・潰瘍,脳脊髄液の混濁が認められた.脳を含む主要臓器からCandida albicans が分離され,形成されていた病変は同菌によることが免疫組織化学的に証明された.消化管,肝臓及び腹膜ではAspergillus 属菌,接合菌の重感染が確認された.また,全身の血管内皮細胞に核内封入体が認められ,電子顕微鏡観察及びDNA解析で牛アデノウイルス(BAdV)4型と同定された.これまで,牛におけるC. albicans による脳脊髄炎の報告はなく,国内におけるBAdV 4型感染の報告も非常に少ない.本症例の病態はこれらの病原体に加え,複数の真菌の重感染が関連して成り立っていると考えられた.