2023 年 76 巻 5 号 p. e110-e115
山形県内で発見された豚熱ウイルス(CSFV)感染野生イノシシの扁桃,口蓋腺,脾臓及び腎臓について病理組織学的検索を行った.肉眼所見は削痩(7/12頭),脾腫(4/12頭),脾臓辺縁の暗赤色化(1/12頭),腎臓の点状出血(2/12頭),病理所見は脾臓のリンパ球減少及び出血,腎臓間質の単核細胞浸潤及び出血が認められた.免疫組織化学的検査では,扁桃(10/10頭),口蓋腺(9/9頭),脾臓(12/12頭),腎臓(12/12頭)でCSFV陽性抗原が検出された.本調査の結果は病原性が中等度とされているCSFV国内流行株感染豚における報告と類似していた.CSFV抗原は扁桃,口蓋腺,腎臓で認められたことから,唾液及び尿中にウイルスを排泄し,野生イノシシ個体群におけるCSFVの感染源となっていたことが示唆された.