養豚農場における豚熱ウイルス(CSFV)の侵入経路の候補としてクロバエに注目した.ハエによるCSFVの伝播リスクを評価するために野生のハエのCSFV保有状況を調査した結果,捕獲したクロバエ類の29.4%(5/17匹)からCSFV遺伝子が検出された.また,ハエ体内におけるCSFVの保有期間を調査するため,飼育下のケブカクロバエにGPE−株培養液(104.7 TCID50/50 μl)を摂食させたところ,摂食24時間後時点でも103.3 TCID50のCSFVが検出された.さらに,養豚農場におけるハエの分布調査では,死亡豚保管庫及び豚舎付近を中心にクロバエが捕獲され,農場にクロバエが飛来していることが確認された.本研究によりクロバエは豚熱の感染経路になりうることが示され,豚熱対策として従来の衛生対策に加え,農場におけるハエ対策も重要であると考えられた.