日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
胸腔鏡下肝部分切除術施行21ヵ月後に横隔膜ヘルニア嵌頓をきたした1例
細見 早苗塚本 忠司金沢 景繁林下 浩士池原 照幸
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2013 年 33 巻 3 号 p. 657-660

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抄録

症例は62歳,男性。肝細胞癌に対する胸腔鏡下肝S8部分切除術の1年9ヵ月後に,間欠的な上腹部痛を主訴に救急搬送された。腹部単純X線写真では,小腸ガスおよび右横隔膜にそって異常ガス像を認めた。単純性イレウスと診断し保存的に経過をみていたが,第4病日に右季肋部に圧痛を認めるようになった。同日の腹部単純X線検査では右横隔膜上の異常ガス像は拡大し,腹腔内腸管にニボー像を認めたため,横隔膜ヘルニア嵌頓によるイレウスの診断のもと緊急手術を施行した。右横隔膜の頂部に欠損を認め,ここから横行結腸が右胸腔内に脱出し嵌頓していた。ヘルニア門は胸腔鏡下肝切除術の横隔膜切開部に一致し,横隔膜ヘルニアの発症の原因と考えられた。横隔膜切開の手術の既往がある場合には横隔膜ヘルニアを晩期合併症として念頭におく必要がある。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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