2025 年 78 巻 1 号 p. e1-e7
2023年10月,長野県内の農場でブロイラーが脚麻痺を呈し死廃数が増加した.剖検で第6胸椎を中心に椎体が腫大し,断面に膿瘍形成に伴う脊髄の圧迫を認めた.病変部からEnterococcus cecorum が分離され,病理組織学的検査で化膿性脊椎炎と診断した.2024年2月以降に初発時と異なるロットの複数鶏舎でも脚麻痺を認め,すべての症例で椎体からE. cecorum が分離された.分離が最も早い症例は7日齢で,同居鶏を10日齢から投薬したが29日齢で一部が発症した.各症例の分離株は,パルスフィールドゲル電気泳動で同一または類似のパターンを示し,単一クローンの拡散が示唆された.また,分離株すべてが病鶏由来株に特徴的と報告された5遺伝子を保有していた.本研究は長野県で初めて確認したE. cecorum 感染症の報告である.