2025 年 78 巻 1 号 p. e8-e14
症例は7歳,避妊済みメスの雑種猫であり,左肩部の腫脹,慢性跛行及び左前肢の激しい疼痛を主訴に来院した.X線検査により,症例の腫脹した左肩部は左肩甲骨の腫瘤性病変と診断された.CT検査により,腫大した左肩甲骨は皮質骨の膨隆と菲薄化,内腔に多発性の囊胞状の構造物を伴っていることが確認された.症例は,疼痛の改善を目的に左前肢断脚術が行われた.術後経過は良好で,術後約3年以上経過した現在も再発なく過ごしている.病理組織学的検査により,左肩甲骨腫瘤は脈瘤性骨囊胞と診断された.脈瘤性骨囊胞は非常に珍しい良性の骨原発腫瘍様病変で,骨の膨張性かつ融解性を示す病変のため,類似した画像所見を示す骨肉腫などの骨原発腫瘍との鑑別が重要と考えられた.