抗菌剤の使用量を削減するためには,抗菌剤による治療実態の把握が重要である.2016~2020年度までの5年間の岐阜県内の牛における抗菌剤による治療回数とその対象疾病を,岐阜県農業共済組合が保有する電子カルテデータを活用して調査した.年ごとの総治療回数は23,180~25,580回で,5年間の総数は119,191回であった.治療回数全体では,呼吸器疾病が58.6%,消化器疾病が22.2%を占めたが,5年間に消化器疾病の占める割合が増加した.肉用牛は県内牛飼養頭数の85.4%を占め,治療回数では呼吸器疾病が96.2%,消化器疾病が92.7%を占めた.また,呼吸器疾病に対しフェニコール系抗菌剤(38.9%)が,消化器疾病に対しサルファ剤系抗菌剤(34.8%)が最も多く使用された.本調査から,岐阜県内で使用される抗菌剤の種類や治療目的が明らかとなり,抗菌剤使用低減のためには呼吸器・消化器疾病対策が重要である.