日本獣医師会雑誌
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犬の先天性食道狭窄症拡張症について
三阪 力熊谷 理治持永 貞一直井 義雄
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1966 年 19 巻 8 号 p. 320-323

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抄録
筆者らは, 幼犬の食道狭窄に続発した食道拡張症に遭遇し, これらの整形手術を行なった結果, 胎生期における大動脈弓の発生分化過程の異常が原因となっていることを知った. これらは胸腔内食道の絞扼による食道狭窄が原因であると考えられたので, 2頭の犬を用いて実験的に, 症例と類似の食道狭窄を作成し, 2ヵ月にわたってその経過を観察した結果, 症例によく合致する症状の発現を認めることができた. 2頭の実験犬のうち1頭は, 2ヵ月経過した後に食道の絞扼を解除し, 絞扼部より前方に生じた食道拡張の経過を観察しているが, 絞扼解除後, 急速に症状の好転を認めている. 以上の症例の手術経験および実験結果から, この種の食道狭窄にともなう食道拡張症に対しては, まず, 狭窄部の整形または, 通過障害の原因を解除する手術を第1に行ない, 食道拡張に対する整形術は十分な経過観察の後に行なうか, あるいは第1の手術のみで, このような拡張を整形することなく, 治癒する症例も少なくないと考えられた.
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