日本獣医師会雑誌
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初乳の効果的利用法
I.保存初乳を給与した子牛血清中の移行抗体の消長と有機酸添加初乳中の抗体価の推移
橋口 裕治八田 忠雄
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1981 年 34 巻 4 号 p. 166-171

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抄録

初乳の効果的利用法について移行抗体付与と乳汁免疫を目的とした初乳の保存法について検討した. 初乳未摂取雄子牛18頭を4群に分け, 生後1.5~4.5時間以内に凍結保存プール初乳を給与量を変えて哺乳させた. 給与量はA群では5ml/kg体重, B群は15ml/kg, c群は25ml/kg, D群は35ml/kgとした. 給与初乳中の抗体価はアデノ7型 (ADV7) は2, 560倍, 牛ウイルス性下痢症 (BVDV) は4, 096倍, パラインフルエンザ3型 (PIV3) は320倍, 牛伝染性鼻気管炎ウイルス (IBRV) は64倍であった. 初乳給与前血清の免疫グロブリン濃度は給与前0または痕跡程度であったが, 給与後はA群を除いて著明に増加し, A群と他群の問に明らかに有意差が認められた. いっぽう, 給与前血清ではいずれのウイルス抗体もなかったが, 給与後血清では急上昇が認められた. 3日後血清のADV7に対する抗体価は, A群では平均57倍, B群は209倍, C群は317倍, D群は417倍であった. 他のウイルスでも抗体価の違いはあるが同様な傾向が認められ, 免疫グロブリン濃度とも相関性が認められた. プロピオン酸と乳酸をそれぞれ0.5%と1%に添加した初乳を5℃ と20℃ に保存し, 牛コロナウイルス, ADV7およびBVDVに対する抗体価の推移を調べた. 5℃ で抗体価が最も安定していたのは0.5%プロピオン酸添加初乳であり, 6~10週後も低下しないか1/2の低下にとどまった.ついで0.5%乳酸であり, 1%添加初乳と有機酸無添加の発酵初乳では抗体価は漸次低下した. 20℃ 保存では比較的早期に抗体価は低下した.

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