日本獣医師会雑誌
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犬子宮蓄膿症の発症傾向とその要因
野村 紘一是枝 哲世鶴野 整傅
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1983 年 36 巻 6 号 p. 310-315

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抄録

犬子宮蓄膿症の自然病例 (207頭) について発症傾向を調査した結果, 次のような成績が得られた,
1) 子宮蓄膿症の発症犬は24品種におよび, スピッツが198例中60例 (30.3%) で最も多かった.
2) 年齢は1~16才 (平均7.5才) の広範囲にわたり, 10才以上11才未満のもの182例中24例 (13.2%) で最も多かったが, 1年未満の発症例はなかった.
3) 発情周期は規則的なものが130例中101例 (77.7%) で多かった.
4) 最終発情から発症までの期間は1ヵ月以内のものから4年のものまであったが, 1ヵ月以内に発症している例が118例中41例 (34.7%) で最も多く, 2ヵ月まででは80例 (67.8%), 3ヵ月まででは97例 (82.8%) が発症していた.
5) 産歴では未経産の発症例が180例中101例 (56.1%) で最も多く, 経産犬では1産が65例中29例 (44.6%), 2産が17例 (26.2%), 3産が11例 (16.9%), 4産が5例 (7.7%) および5産が2例 (3.1%) の順で, おおむね産次数の増加につれて発症率の低下する傾向が見られた.
6) 最終分娩から発症までの期間は20日から9年 (平均4年) に及んでいたが, 5年以上のものが53例中26例 (49.1%) で約半数をしめていた.
7) 発症直前の特筆事項の中では, 最終発情時の交尾歴を有するものが207例中41例 (198%) で最も多かった.
以上の結果から, 犬子宮蓄膿症の第1の発症要因は卵巣機能異常にあるのではなく, むしろ正常卵巣支配下における子宮の異常に基づくものであろうと考えられる.

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