日本獣医師会雑誌
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豚疥癬症の治療試験
関沢 文夫佐藤 満雄榎本 静夫松倉 文明島田 健次郎
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1983 年 36 巻 6 号 p. 320-325

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抄録

豚疥癬症を起こすSarcoptes scabiei var. suis (ブタヒゼンダニ) の検出方法を検討し, それに基づき治療試験を行った.
ブタヒゼンダニの検出方法は痂皮の部分を血がにじむくらい薬匙で掻爬し, シャーレに採取する. 採取材料を直接および37℃ で30分~1時間加温後鏡検した. 8月にはいずれの方法でも検出率に差はなかったが, 11月には1時間加温の場合にのみ検出された.
繁殖母豚46頭に有機リン系殺虫剤KWA-905 (ナレド36%含有) 500倍液を3日間隔3回自動噴霧機により体表に散布し, 38日後に43頭は治癒したが, 3頭は耳の内側に痂皮がわずかに残った. これは薬剤が十分に到達しなかったためと考えられる.よって耳の内側にはスポンジ等で本剤を塗布することが望ましい.
子豚の治療試験では本剤500倍液を1回散布しただけであったが, 良好な成績が得られた. これは症状が母豚に比較して軽度であったためと思われる.
薬剤の安全性の試験において, 臨床および血液検査はすべて正常範囲内であり, 血中Cortisol値も一時的な増加が認められただけであった.
したがって, 供試薬剤KWA-905は豚体への影響もなく, 豚疥癬症の治療薬として有効であった.

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