日本獣医師会雑誌
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犬子宮蓄膿症における子宮の重量ならびに形状
野村 紘一是枝 哲世鶴野 整傳
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1985 年 38 巻 11 号 p. 699-707

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抄録

自然病例の犬子宮蓄膿症207例の子宮重量および形状について調査し, 次の結果を得た.
1) 子宮内容排除後の子宮重量は体重10kg当たりに換算すると, 7.0g-977.8gの範囲にあり, 平均148.67±128.78gであった. 20g以上のものが96.9%を占め, 妊娠や分娩後を除いた生理状態の子宮より重いものが多かった.
2) 子宮の外形は西洋なし形, ソーセージ形, 大分節形, 小分節形, 単球形, 連球形および混合形に大別することができた. これらの内ではソーセージ形, 大分節形および小分節形を示すものがそれぞれ79例 (38.2%), 50例 (24.2%) および25例 (12.1%) の順で多かった.
3) 子宮内膜の形状は小室形成, 隔壁形成, 重弁状皺襞形成, 紐状皺襞形成および比較的内膜の平坦なものに分けることができた. また, 内膜の性状としては嚢胞状肥厚, 絨毛状肥厚, 浮腫状肥厚および潰瘍形成や出血, 偽膜形成などが認められた. さらに, 胎盤の遺残するものや腫瘍の存在するものもあった. これらの内では形状として, 内膜平坦なものが32.4%で最も多く, 性状としては嚢胞状肥厚を示すものが39.3%で最も多かった.
これらの子宮蓄膿症の子宮の形態は, 発症時点における子宮の生理状態を基礎として発達し, これに発症からの経過期間や炎症の強さ, 子宮内での膿の移動性の有無や膿が頸管から排出されるか否かなどによって多種多様に修飾され形成されるものと考えられた.

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