双口吸虫の発育史の研究の一環として, 双口吸虫の濃厚汚染地区である福島県耶麻郡熱塩加納村および大沼郡三島町において昭和55年6月~56年7月の期間, 計4回にわたって自然感染貝の調査を実施した. その結果, 大沼郡三島町内の一酪農家の所有水田から採集したヒラマキミズマイマイ (Gyraulus chinensis) 70個体中31個 (44.3%) に双口吸虫のレジアとセルカリアの寄生が認められた. 感染貝から得られたメタセルカリアを2頭の山羊に感染させた結果, 2頭とも感染が成立し, prepatent periodは56日, 虫体回収率 (感染後52日) は37.6%であった. 剖検によって得られた双口吸虫を組織学的に精査した結果, Orthocoelium streptocoelium (FISCHOEDER, 1901) Yamaguti (1971) と同定された.このことから, 福島県においてもO.streptocoeliumが分布することが明らかになり, 本種の中間宿主がヒラマキミズマイマイであることが確認された.