1985 年 38 巻 5 号 p. 305-309
牛血清によるミンク腸炎ウイルス (MEV) の猫肺由来株化細胞における核内封入体 (IB) 形成阻止の機序と阻止物質の性状を調べた. 市販子牛血清 (CS) はIB形成を顕著に阻止したが牛胎児血清 (FCS) の阻止活性は弱かった. CSをエチルエーテル, トリプシン, レセプター破壊酵素あるいは過ヨウ素酸カリで処理するとMEVのIB形成阻止活性は顕著に低下した. しかし, カオリン, アセトンおよびヘパリン・MgCI2処理は阻止活性に影響を及ぼさなかった. CSのIB形成阻止活性はIgGおよびIgG以外の両方の画分に認められたが, FCSのそれは主としてIgG画分に存在した. IB形成阻止物質の細胞への付着および細胞による阻止物質の吸収, あるいはMEVとCSとの非結合性から, 牛血清中の阻止物質によるMEVのIB形成阻止は, 阻止物質の細胞への結合によるウイルス感染阻止によるものであろうと推測された. また, CS, FCS両者に存在するMEVによる血球凝集を非特異的に抑制する物質は, IB形成阻止物質とは異なるものと考えられた.