日本獣医師会雑誌
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放牧牛に発生した輸送熱とそれに関与した病原体
小茂田 匡央小材 幸雄糸井 浩野呂 明弘山田 勤木村 容子野口 求小泉 俊二
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1988 年 41 巻 6 号 p. 408-411

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抄録

1986年5月, 県内の一放牧場に入牧した254頭の乳用育成牛群に入牧後1週間ほどで元気消失, 発熱, 鼻汁漏出, 発咳等を主徴とする呼吸器病が発生した. 発症牛6頭の鼻腔ぬぐい液を検査したところ, 5例からMycoplasma (M) bovirhinisPasteurella (P) multocida, 3例からP. haemolyticaが分離され, 2例からParainfluenza virus type 3 (PI-3) が分離された. また, 発死例の肺と副鼻腔からP.haemolyticaM. bovirhinisが分離された.
発症牛6頭のペア血清について抗体検査を実施したところ, M. bovirhinis, PI-3および牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルス (BVD・MDV) に対する抗体価の上昇が認められた.
驚死した1頭を剖検したところ, 限局性の肺炎巣が認められ, 気管および気管支内には線維素を混じた泡沫液を入れ, 副鼻腔の粘膜は赤色で, 白色偽膜様物を付着し, 乳白色粘稠液を充満していた. 病理組織学的には, 肺のうっ血と水腫が著明で, 細気管支と副鼻腔の粘膜上皮内に好酸性の細胞質内封入体がみられた.
以上の成績から, 本症例はPI-3感染にM. bovirhinis, P. haemolyticaおよびP. multocida感染が複合的に関与して発生したものと考えられた. BVD・MDVの本症への関与は明確ではなかった.

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