151例の犬糸状虫大静脈塞栓症に, 頸静脈法による虫体摘出手術を行って治療したが, 39例が1年以内に心不全に関連して死亡した. そのうち, 手術中または術後に三尖弁領域の収縮期心雑音が聴取される状態で死亡した8例で剖検を行った結果, 6例に犬糸状虫の三尖弁腱索へのてん絡を認めた. さらに, てん絡状態を詳細に観察した3例では, いずれも角尖腱索を中心にてん絡が認められた. 遇然に生じたてん絡により三尖弁逸脱を生じ, そのために生じた異常血流は, 時日経過とともにてん絡をより強固にすると推測された. 寄生虫数が少ない場合でも, 糸状虫の腱索へのてん絡が生ずると, 顕著な三尖弁閉鎖不全を生じ, 予後不良となるものと推測された.