日本獣医師会雑誌
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日本の豚における豚血球凝集性脳脊髄炎ウイルスの抗体調査
平原 正安原 寿雄松井 修出水田 昭弘吉木 研一福山 新一児玉 和夫中井 正久佐々木 文存
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1989 年 42 巻 12 号 p. 867-870

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抄録

1978年から1988年の11年間に, 日本各地の豚群から無作為的に採集した4, 846例の豚血清について豚血球凝集性脳脊髄炎 (PHE) ウイルスNPTr32株に対する血球凝集抑制 (HI) 抗体を測定した. その結果, 月齢別にみた抗体陽性率は, 1カ月齢では57.7%のものが2カ月齢には36.2%へ低下し, 3カ月齢には59.7%へ再び上昇し, 5カ月齢には84.1%の最高値に達した. また, 繁殖母豚の抗体陽性率は68.2%であった. 年席別にみた抗体陽性率は50.0%~88.3%の範囲にあったが, 1978年から1980年はいくぶん低く50.0%~70, 0%で, 1981年から1984年は割合に高く76.3%~88.3%を示し, 平均HI抗体価は抗体陽性率の高低に伴って変動した. さらに地域別にみた抗体陽性率は, 全地域で50%以上の抗体陽性率を示し, 地域による陽性率に極端な差はみられなかった.
以上の成績は, 本病が広く浸潤していることを示している. また, PHEウイルスの感染は, 最も感受性の高い哺乳期から1カ月齢までは母豚からの移行抗体により防御されていると考えられた. しかし, 移行抗体が消失する時期に多くの豚がPHEウイルスに感染することが明らかとなり, この時期の肥育豚への悪影響が懸念された.

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