日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
各種消毒薬の木綿包帯, 鶏卵殻および木片に付着したウイルスに対する殺ウイルス効果とその持続について
野田 雅博山下 秀之佐藤 多津雄三浦 潔山中 敬三稲葉 右二
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 42 巻 12 号 p. 877-882

詳細
抄録

クロロフェノール系1種, オルソジクロールベンゼン・クレゾール系1種, 塩素系2種およびアルデヒド系4種の計8種の消毒薬を用いて, 木綿包帯, 鶏卵殻およびポプラ木片に付着させたウイルスに対する殺ウイルス効果を検討した. 使用したウイルス株はDNAウイルスの牛ヘルペスウイルス1型, ワクシニアウイルス (VV) および犬アデノウイルスの3種, RNAウイルスの鶏ニューカッスル病ウイルス (NDV), 牛エンテロウイルスおよび牛ロタウイルスの3種の計6株を用いた. 木綿包帯に付着したエンベロープを有するDNAおよびRNAウイルスに対しては使用したすべての消毒薬の有効性が認められた. また, エンベロープを欠くDNAおよびRNAウイルスに対しては塩素系およびアルデヒド系消毒薬の有効性が認められた. 鶏卵殻に付着したエンベロープを有するDNAおよびRNAウイルスに対しては使用したすべての消毒薬の有効性が認められた. ポプラ木片に付着したエンベロープを有するDNAウイルスのVVおよびRNAウイルスのNDVに対しては, 塩素系およびアルデヒド系消毒薬に有効性を認め, エンベロープを欠くDNAウイルスに対して, アルデヒド系消毒薬に有効性を認めた.
次に, 殺ウイルス効果の持続性を検討した. すなわち, 逆性石けん系1種, クロロフェノール系1種, オルソジクロールベンゼン・クレゾール系1種, および塩素系2種の計5種の消毒薬の薬液調整後, NDVおよび鶏アデノウイルス (FAV) を用いて試験を行った.
その結果, オルソジクロールベンゼン・クレゾール系および塩素系消毒薬ではNDVに対して2~4日間, ほかの消毒薬は2日間殺ウイルス効果が持した. また, 有機物 (鶏糞) 存在下ではオルソジクロールベンゼン・クレゾール系および塩素系消毒薬の殺ウイルス効果は安定していたが, 逆性石けん系消毒薬は有機物存在の影響を強く受け, 無効であった. さらにFAVに対しては, 塩素系消毒薬では2~4日間, 殺ウイルス効果が持続した.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医師会
前の記事 次の記事
feedback
Top