日本獣医師会雑誌
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牛の大脳皮質壊死症の1例
荻野 博明渡辺 大成中林 大鍋谷 政広村山 仁一石川 正男
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1989 年 42 巻 12 号 p. 885-888

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抄録

1989年1月, 新潟県の肉用牛肥育農家で, 北海道から導入した12ヵ月齢の肥育素牛1頭が突然, 食欲廃絶, 発熱, 四肢伸張, けいれん等の症状を呈し, 加療したが予後不良と判断され鑑定殺された. 剖検により, 大脳は水腫性で背面が全体に黄白色を呈し, 皮質域に黄色病変が散見された. 大脳断面を紫外線下で観察したところ, 皮質域の黄色部とほぼ一致し蛍光が認められた. 組織学的には, 皮質域に神経細胞の乏血性変化, 壊死した神経細胞周囲および血管周囲腔の拡張, 空胞形成, マクロファージの顕著な浸潤, 血管壁の水腫, グリア細胞の増殖が認められた. 脳の総チアミン濃度は0.24μg/g湿重量で, 明らかに低い値を示し, 心臓および肝臓の総チアミン濃度も低値を示した. 同居牛10頭の血中総チアミン濃度と赤血球ケトラーゼ活性値には異常は認められなかった. 以上のことから本症例は大脳皮質壊死症と診断され, チアミン欠乏により発症したものと推察された.

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