1989 年 42 巻 4 号 p. 262-265
広島県内の一養豚農家において, 1985年5月生まれの未経産の一繁殖用母豚に, 1986年10月と1987年2月の2回連続して流産が発生した. この母豚および2回にわたる流産胎児, 胎児胎盤について病理学的検査を行った.
病理解剖学的に2回目の流産胎児の1頭の肝臓に粟粒大から針頭大の灰白色結節が散見され, 胎児胎盤にも米粒大から粟粒大の灰白色結節が散見されたが, 他の1頭では著しい死後融解のため病変を確認できなかった. また, 母豚では膣粘膜に黄色不透明な粘液が少量付着し, 子宮内膜はやや褐色を帯びていた. 1回目の流産胎児では全身に死後融解を認めた以外, 著変は認められなかった, 病理組織学的に母豚の生殖器, 肝臓, 腹腔内リンパ節に肉芽腫性病巣を認め, 流産胎児の肝臓, 脾臓, 肺, リンパ節, 脳, 筋肉, 皮膚, 皮下織および胎児胎盤等に肉芽腫性病巣を認め, これらの臓器のチール・ネルゼン染色では, 肉芽腫性病巣内に抗酸菌を認めた. 以上の所見から, この繁殖用母豚に2回連続して発生した流産は, 抗酸菌による流産と考えられた.