1989 年 42 巻 4 号 p. 257-261
抗酸菌の細胞壁に含まれるミコール酸および糖脂質 (Glycopeptidolipid) を薄層クロマトグラフィーによって分画する手法を用い, 屠畜検査でしぼしば発見される豚の全身性非定型抗酸菌症から分離された菌の同定と, 血清型別を行った.
16頭から分離された92株は生化学的性状ならびにミコール酸のサブクラス組成からすべてM. intracellulareと同定された. このうち, 1頭から分離された7株は血清凝集反応および菌体糖脂質の薄層クロマトグラフィーパターンによって血清型4型に型別され, 他の15頭の85株はすべて8型であった. また, 一養豚場でみられた集団発生豚の9頭からはすべて血清型8型が分離された.
以上のことから, 化学的分析手法を用いた抗酸菌の同定および型別法は一般の検査室でも実施可能であり, 本症の迅速診断と疫学的調査に有用な一手法と思われる.