1989 年 42 巻 5 号 p. 319-323
1987年7月から8月にかけて, 肉用牛400頭規模の肥育農場で, 導入直後の牛約30頭に呼吸器症状と発熱を主徴とする疾病が発生し, 3頭が死亡, 4頭が廃用となった.
死亡牛1頭, 発症牛10頭について病性鑑定の結果, 病理学的検査では著明な線維素性肺炎像がみられ, 肺の酵素抗体法 (ABC法) でPasteurella haemolytica抗原が特異的に検出された. 細菌学的検査では, 死亡牛の肺, 気管等から純培養状に, また発症牛鼻腔ぬぐい液10例中7例から優勢にP. haemolyticaが分離され, いずれも生物型A, 血清型1に属した.P. haemolyticcaに対する抗体検査では, 死亡牛, 発症牛とも高い抗体価を保有していた.
以上の諸成績から, 本症例はP. haemolytica感染症と診断された.
本症発生の要因としてに, 導入に伴った種々のストレスにより抗病性が低下し, 本菌の増殖をゆるし, さらに不適切な飼養管理が病勢を増悪させ, 集団的発生にいたったものと考えられた.
この農場に対し, 発生要因をもとにストレスの除去, 衛生管理, 病原体対策を指導した結果, 以後の発生は認められなかった.