日本獣医師会雑誌
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牛の腫瘍性および炎症性疾患における血清α1酸性糖蛋白
大成 京子高橋 清志黒沢 隆川本 哲其田 三夫田村 啓二
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1990 年 43 巻 1 号 p. 19-23

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抄録

診断が確定した白血病, 腫瘍および炎症性疾患牛合計145例と正常牛10例の血清α1酸性糖蛋白 (α1-AGP), シアル酸およびムコ蛋白濃度ならびにリンパ球数およびγ-グロブリン量を測定した. ウシの血清α1-AGP濃度 (4g/ml) の平均は, それぞれ健康牛; 330.5±104.5, 子牛型白血病; 897.8±500.8, 胸腺型; 848.3±826.5, 成牛型; 1, 353.2±769.6, 皮膚型; 480.0±353.6, 骨髄性白血病; 4, 050.0, 腫瘍; 702.8±339. 4, 牛ウイルス性下痢・粘膜病 (BVD-MD); 1, 065.6±707.4, 創傷性心膜炎; 1, 411.8±862. 5, 慢性心内膜炎; 1, 987.3±1, 387. 1, 壊死性乳房炎; 1, 471.7±939.5, および顆粒球機能不全症; 1, 107.5±56.4であった.
血清α1-AGPは, シアル酸およびムコ蛋白の両者と正の相関が認められた
各疾患別にα1-AGPとリンパ球数およびγ-グロブリンとの相関を求めたところ, 壊死性乳房炎においてのみα1-AGPとリンパ球数との間に負の相関を, またα1-AGPとγグロブリン値との間に正の相関が認められた.
以上の結果からウシのα1-AGP濃度は白血病, 腫瘍および炎症性疾患で上昇し, シアル酸およびムコ蛋白のそれと類似した変化を示すことが明らかとなった.以上のことから, α1-AGPはこれらの疾患の非特異的指標として診断的価値があると判断された.

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