2005 年 58 巻 7 号 p. 475-479
猫における代謝性骨疾患の診断法の一助とするために, マイクロデンシトメトリー (MD) 法を応用して大腿骨の形態学的評価を行った. はじめに健常値を得るため臨床的に健康な猫24頭を供試した.解析方法はX線写真撮影により得た右側大腿骨側方向のComputed Radiography (CR) 画像を画像解析ソフトにより, 大腿骨遠位端から骨長の20%位の骨横断面のデンシトメトリーを計測した.計測した数値を用いて骨密度と皮質骨指数を算出した. 骨密度および皮質骨指数はそれぞれ6.06±1.59mg/mm3および0.33±0.05であった. 骨密度には大きなバラツキが観察され, 解析時に軟部組織の影響を強く受けることが考えられた. いっぽう, 皮質骨指数は年齢, 性別および体重に関係なく一定した値が観察され, 骨の形態的評価に有用な指数であると考えられた. 次に3例の慢性腎不全について健康猫と同様の検討を行ったところ, 3例中2例で皮質骨指数が低値を示し, 亢進した骨吸収や石灰化不全の存在が示唆された. 本法は非侵襲的であり, 安価かつ迅速な処理が可能であることから, 骨形態学的評価法として有用であると考えられた.