2007 年 60 巻 10 号 p. 724-728
10歳, 雄の日本猫が喉の異常音, 嘔吐, やがて嚥下困難を発し, 触診およびX線検査により右下顎腺の腫大が発見された.摘出した下顎腺は病理組織学的, 免疫組織化学的に希有な組織像を示す唾液腺悪性混合腫瘍と診断された.腫瘍巣の全域にわたって正常な下顎腺組織は存在せず, 扁平上皮癌, 間質における筋上皮細胞の増殖巣, 筋上皮細胞の骨芽細胞への分化と類骨・石灰化骨梁の旺盛な形成を伴った骨肉腫により構成されていた.しかし, 腫瘍巣には粘液性基質や軟骨性基質はまったく存在せず, 猫でこれまでに報告のないまれな混合腫瘍であった.