日本獣医師会雑誌
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野生動物におけるカドミウム, タリウムおよび鉛汚染の実態調査
佐藤 至辻本 恒徳山下 竹治齋田 栄里奈渡辺 元田谷 一善世良 耕一郎津田 修治
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2007 年 60 巻 10 号 p. 733-737

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抄録

野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが, 近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている.このため本研究では, ツキノワグマ, ホンシュウジカ, ニホンカモシカ, トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い, これらの重金属による汚染状況を調査した.カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く, ツキノワグマで74頭中27頭, トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた.鉛はツキノワグマとカワウで高く, 5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが, カワウではこれを超えるものはなかった.タリウムはすべての試料で検出されなかった.これらの結果は, ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており, さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している.

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