2000 年 62 巻 9 号 p. 965-970
犬ヘルペスウイルスI型(CHV−1)は他のαヘルペスウイルスと比較して,極端に狭い宿主細胞域を示す.今回,定量PCRを用いて,非感受性細胞におけるCHV−1の吸着,侵入過程を調べた.感受性のMDCK細胞と同様に,非感受性細胞においてもCHV−1の吸着が見られた.しかしながら,その吸着のほとんどはヘパリンによって阻害された.さらに,非感受性細胞では,細胞内へのCHV−1の侵入が減少した.これらの結果から,CHV−1の宿主細胞域は侵入の段階で決定されていることが示された.また,MDCK細胞には,ヘパラン硫酸とは別のCHV−1受容体が存在するが,非感受性細胞ではこのような受容体が存在しないため,細胞内に侵入できないものと考えられた.