日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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動物体内におけるアミノグリコシッド系抗生物質の鑑別法
吉村 治郎伊藤 治米沢 昭一
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1982 年 44 巻 2 号 p. 233-239

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抄録

ジヒドロストレプトマイシン, カナマイシンおよびフラジオマイシンを豚または牛に投与し, 殺処分後に採取した腎, 肝, 筋および尿中に含まれるこれら抗生物質の鑑別を試みた. まず, 蒸留水を用いて, 各検体の希釈乳剤を作成し, Micrococcus luteus ATCC 9341 と Bacillus subtilis ATCC 6633 に対する阻止径を, pH6.0 と 8.0 に調整した寒天培地を用いて測定した. この方法により, B. Subtilis に対し pH 8.0 の培地で最も大きな阻止径を示した腎と尿だけを, 薄層クロマトグラフィーによる鑑別に供した. すなわち, 組織乳剤および尿の限外濾液を作成し, 2枚のシリカゲルプレートの原点にスポットした. 1枚のプレートはクロロホルム-メタノール-l7%アンモニア(2:1:1, 展開液A)の上層で, 残り1枚のプレートは n-プロパノール-ピリジン-酢酸-水(15:10:3:12, 展開液B)で展開し, B. Subtilis を試験菌とする bioautography により Rf 値を求めた. いずれの抗生物質においても, それぞれの供試検体の Rf 値は, 常用標準品のそれよりもやや高くなる傾向があった. また, 展開液Aを用いた場合には, しばしばテーリングがみられた. しかし, 薄層クロマトグラフィーを2枚のシリカゲルプレートを用いて行えば, 屠畜の腎や尿に残留するアミノグリコシッド系抗生物質の鑑別も可能と思われた.

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