日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
馬の実験的緑膿菌感染による角膜潰瘍に対する免疫グロブリンの角膜内注射による治療効果
上田 八尋佐内 豊本間 遜
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 44 巻 2 号 p. 301-308

詳細
抄録

馬の緑膿菌感染による角膜潰瘍を治療する目的で, 免疫グロブリンを角膜内に注射しその効果を薬物のみで治療した症例と比較した. 免疫グロブリンは OEP ワクチン, プロテアーゼトキソイド, エラスターゼトキソイド, およびエキソトキシントキソイドによって馬を免疫して得た. この免疫グロブリンは, OEP-PHA 価が4,094倍, プロテアーゼー, エラスターゼ-PHA 価がそれぞれ512倍, およびエキソトキシン- PHA 価が360倍と, 極めて高い抗体価を有していた. 傷をつけた角膜に緑膿菌を接種し, 24時間後に角膜潰瘍の発症を確認したうえで, 1症例には抗生物質を主体とした薬物療法のみで加療しだが, 効果は得られなかった. 同様に角膜潰瘍を形成した2症例には, 免疫グロブリンの角膜内注射と抗生物質の併用療法を行ったところ, 極めて良好な結果が得られた. これらのことから, 潰瘍を形成してしまった症例の薬物治療は極めて困難であるが, 高い抗体価を有する免疫グロブリンの角膜内注射と抗生物質の併用で相乗効果が得られ, 治癒させることができた. 角膜潰瘍を形成してから始めた治療は, 臨床例により近い条件であり, その治療効果が良好であることは野外例にも十分応用できるものと思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top