抄録
豚肺虫症の肺病理像は虫体が白血球の遊走促進因子を有することを示唆しているので, 豚肺虫成虫のべロナール緩衝液抽出液に対するモルモット白血球の遊走作用を in vivo, in vitro で調べた. モルモット皮内に該抽出液 0.1ml (蛋白量50μg) を注射すると, 4時間後から注射局所に好酸球・好中球が増加しはじめ, 8時間後にピークに達し, 24時間後には平常値に復帰した. 抽出液蛋白量を 500, 50, 5μg/ml に調整して, 皮内と Boyden chamber で用量反応関係を検討すると, in vivo, in vitro ともに好酸球・好中球の遊走活性は蛋白濃度の対数に比例した. in vitro ではマクロファージの遊走も認められた. 虫体抽出液の白血球遊走促進作用は56℃ 30分, 100℃ 10分加熱により著明に低下し, 作用因子は非透析性で凍結乾燥にも安定であった.