抄録
牛の肝膿瘍の発生機序を解析する一つのアプローチとして, BALB/cマウスを用いて, Fusobacterium necrophorum の感染実験を行った. 肝膿瘍は F. necrophorum を腹腔内あるいは静脈内に接種したマウスで認められ, 膿瘍内には3.6×109個/gのF. necrophorum が存在していたが, 肺臓, 脾臓および腎臓における菌数は104~106個/gであった. Corymebacterium pyogenes あるいは Bacteroides oralis を接種したマウスでは膿瘍は認められなかったが, F. necrophorum と C. pyogenes との混合液を接種すると, 肝膿瘍形成は増強された. しかし, このような相乗作用はF. necrophorum と B. oralis あるいは黄色ブドウ球菌との間では認められなかったが, F. necrophorum の活発に増殖した肝臓の膿瘍部から多数のC. pyogenes と B. oralis が回収された. これらの成績から, しばしば牛の肝膿瘍から分離されるC. pyogenes は肝膿瘍の形成においてヘルパー細菌であり, B. oralis と黄色ブドウ球菌は二次感染菌であると思われた.