抄録
東南アジアから輸入された18頭のカニクイザル (Macaca fascicularis)に見られたhepatocystisの肝病変について病理組織学的検索を行い, 病理発生について考察を試みた。肝臓のみに認められた病変はhepatocystisの生活史のうちの赤血球外性のシゾゴニー期を示すものであった。それはメロシストの形成とメロゾイトの放出, そしてこれに肝組織の退行性および進行性の変化を伴うものであったが, 多くの例では主として未熟なあるいは成熟したメロシストがメロゾイト未放出のままに肉芽組織によって破壊・吸収される像が認められた。これらの病変の多くは瘢痕化の過定にあり, 球形で細胞成分に乏しい結合組織から成っていた。3例を除いて, シゾントの初期発育像や成熟メロシストのメロゾイト放出による壊死性病変は入国後20日以内の例に認められた。本原虫の寄生はメロシストの破壊を伴わない限り, 宿主には大きな障害は与えないので十分な検疫期間を経た個体は特殊な実験でない限り実験用動物として利用できると考えられた。しかし, 入国後60日以上を経た少数例にシゾントの初期発育像が認められた事は本原虫の生活史の複雑さを示唆するものであった。そのメロシストの独特な構造や宿主の地理的分布から, 今回の例はHepatocystis semnopitheciによるものと考えられた。