有機燐剤フェンチオン (MPP) ミストのラットにおける全身暴露と鼻部暴露(アニマルホルダー収容) による毒性を比較した. LC50 (4h) は全身暴露では0.22mg/l,鼻部暴露では1.84mg/lであった. MPPを経口あるいは皮下投与による急性毒性試験結果からホルダーの拘束は,毒性にほとんど影響を及・ほさないことが示唆された. 一方,全身暴露によるMPPミストの毒性は,暴露終了後に動物の被毛を刈り取ると軽減した. 全身暴露群と鼻部暴露群の動物にMPPミストを同一濃度で同時に暴露すると,全身暴露のほうが鼻部暴露時より全血ChE活性が強く抑制された. ChE活性の抑制は全身暴露後に被毛を刈り取ると軽減した. 全身暴露群,鼻部暴露群,全身暴露後毛刈り取り群の動物をそれぞれのLC50に対して4時間暴露すると,暴露後の全血ChE活性の抑制度は,ほぼ同様であった. 以上から,MPPミストの全身暴露による毒性は鼻部暴露の8倍で,その差は吸入以外により取り込まれたMPPによることが示唆された.