抄録
1984年10月から11月にかけて鹿児島県下で神経症状を示す疾病が10頭の子牛に発生した.そのうち1頭の小脳からHmLu-1細胞にCPEを示すウイルスが分離され,イリキ株と名付けられた.発症牛は全例に,また同居牛も高率に本ウイルスに対する抗体を保有していた.おとり牛を用いた調査により,1984年には本ウイルスに対する抗体の陽転がみられ,このウイルスの流行が示唆された.イリキ株は中和試験によりアカバネウイルスと片側交差を示すことから,アカバネウイルスに分類されると思われる.電子顕微鏡的にも本ウイルスはアカバネウイルスと類似していた.本ウイルスの実験感染の結果,子牛は自然感染例と類似の致死的な神経症状及び脳病変を示した.以上の結果から,イリキ株は今回報告された子牛の非化膿炎の原因であることが明らかとなった.