抄録
Theileria sergenti感染牛赤血球の浸透圧脆弱性および膜形態の変化について検討した.実験感染牛では,原虫寄生率の増加にともない赤血球浸透圧脆弱性は亢進し,等張域における溶血率は原虫寄生率よりも明かに高い値を示した.この現象は密度勾配分画された各寄生率の赤血球においても同様であった.血清浸透圧は感染牛,潟血牛ともほぼ一定の値で推移した.走査型電子顕微鏡による観察の結果,重篤時の牛の赤血球は変形し,ほとんどの赤血球はEchinocyteの状態に陥っていることが判明した.またEchinocyteの比率は原虫寄生率よりも著しく高い値を示した.同様の現象は小型ピロプラズマ病重篤時の放牧牛においても認められた.以上の成績から,赤血球の浸透圧脆弱性と膜形態の異常はT. sergenti寄生赤血球のみならず,非寄生赤血球においても起きていることが示唆された.